妊娠おめでとうございます。新しい命を育む喜びとともに、お口の健康についても気になることが増えているのではないでしょうか。
「妊娠中に歯医者に行っても大丈夫なの?」「つわりがひどくて歯磨きもままならない」「お腹の赤ちゃんに影響はないの?」——妊娠中は、こうした不安や疑問を抱える方がとても多くいらっしゃいます。
実は、妊娠中はホルモンバランスの変化により、お口の環境が大きく変わる時期です。虫歯や歯周病のリスクが高まるだけでなく、歯周病が早産や低体重児出産のリスクを高めるという研究報告もあります[1]。だからこそ、この時期こそ適切な予防ケアが大切なのです。
あい歯科クリニック高尾では、妊婦さんや授乳中のお母さまに安心して通っていただけるよう、体調やお腹の状態に配慮したマタニティ歯科メンテナンスをご提供しています。私たち歯科衛生士が、お一人おひとりの状態に合わせて、優しく丁寧にサポートさせていただきます。
この記事では、なぜ妊娠中に歯科メンテナンスが必要なのか、当院ではどのような予防処置を行うのか、そして妊娠期別の通院タイミングについて詳しくご説明します。
妊娠中に歯科メンテナンスが必要な理由
妊娠すると、お口の中は想像以上に大きな変化を迎えます。「今まで虫歯になったことがないのに」という方でも、妊娠を機に歯のトラブルを経験されることは珍しくありません。ここでは、妊娠中特有のお口のリスクについてお話しします。
ホルモン変化による歯周病リスクの増加
妊娠すると、エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンが急激に増加します。これらのホルモンは歯周病菌の増殖を促進し、歯ぐきの血管を拡張させるため、歯肉が腫れやすく出血しやすい状態になります[2]。
毎日の診療で感じるのは、妊娠中期から後期にかけて歯ぐきの腫れを訴える妊婦さんがとても多いということです。これは「妊娠性歯肉炎」と呼ばれ、妊婦さんの30〜75%に見られるとされています。放置すると歯周病へと進行し、歯を支える骨にまで影響を及ぼす可能性があります。
さらに注目すべきは、歯周病とお腹の赤ちゃんへの影響です。歯周病菌が産生する炎症性物質が血流を通じて子宮に到達し、早産や低体重児出産のリスクを約7倍に高めるという研究報告があります[1]。これは喫煙や高齢出産よりも高いリスクと言われており、妊娠中の歯周病予防がいかに重要かがわかります。
つわりによる口腔環境の悪化
つわりの時期は、多くの妊婦さんにとって歯磨きが最も辛い時期です。「歯ブラシを口に入れると吐き気がする」「歯磨き粉の匂いが受け付けない」といったお悩みをよく伺います。
歯磨きが十分にできないと、お口の中に食べかすやプラーク(歯垢)が溜まりやすくなります。さらに、つわりで嘔吐を繰り返すと、胃酸によって歯の表面が溶けやすくなる「酸蝕症(さんしょくしょう)」のリスクも高まります。
また、つわり中は少量ずつ何度も食事を摂る「ちょこちょこ食べ」になりがちです。お口の中が酸性に傾く時間が長くなり、虫歯菌が活動しやすい環境が続いてしまうのです。
唾液の質と量の変化
妊娠中は唾液の分泌量が減少し、唾液の性質も変化します。唾液には、お口の中を洗い流す「自浄作用」や、酸を中和する「緩衝作用」、歯を修復する「再石灰化作用」など、虫歯や歯周病を防ぐ重要な役割があります。
唾液が減ると、これらの防御機能が低下し、細菌が増殖しやすくなります。「口の中がネバネバする」「口臭が気になる」といった症状は、唾液の変化が原因であることが多いのです。
こうした妊娠中特有のリスクがあるからこそ、セルフケアだけでなく、歯科医院でのプロフェッショナルケアを併用することが大切です。
当院で行う妊婦さん向けの安全な予防処置
「妊娠中でもクリーニングは受けられるの?」「レントゲンは大丈夫?」——初めて来院される妊婦さんからよくいただくご質問です。あい歯科クリニック高尾では、妊婦さんとお腹の赤ちゃんの安全を最優先に、適切な予防処置をご提供しています。
体調に配慮した優しいクリーニング
当院の妊婦さん向けクリーニングは、通常のクリーニングとは異なる配慮を行っています。
まず、診療チェアの角度です。お腹が大きくなってくると、完全に仰向けの姿勢は苦しく、血圧が下がって気分が悪くなること(仰臥位低血圧症候群)があります。私たちは、妊婦さんが楽な姿勢で受けられるよう、背もたれを少し起こした状態で施術を行います。また、妊娠後期の方には、右腰の下に丸めたタオルやクッションを入れ、少し左側を向いた楽な姿勢をとっていただくことで、お腹の血管への圧迫を防ぎます。
施術時間も短めに設定し、途中で休憩を挟みながら進めます。「トイレに行きたくなったらいつでも教えてくださいね」とお声がけし、無理のないペースで進めることを心がけています。
クリーニングの内容は、超音波スケーラーやハンドスケーラーを使った歯石除去と、専用の研磨剤を使ったポリッシング(歯面研磨)が中心です。これらの処置は妊婦さんにも安全で、お腹の赤ちゃんへの影響はありません。
妊娠中の検査と診断
妊娠中でも、基本的な歯科検査は問題なく受けていただけます。むし歯のチェック、歯周ポケット検査(歯ぐきの溝の深さを測る検査)、プラークの付着状況の確認などを行い、お口の状態を正確に把握します。
レントゲン撮影については、基本的に妊娠中は避けることをお勧めしていますが、どうしても必要な場合は妊娠安定期(16〜27週)に限り、防護エプロンを使用した上で最小限の撮影を行います。歯科用レントゲンの放射線量は非常に微量で、お腹から離れた口元だけの撮影のため、適切な防護を行えば胎児への影響はほとんどありません[3]。
それでもご不安な方には、視診と触診を中心とした検査で対応いたしますので、遠慮なくお申し出ください。
つわり対策と自宅ケアのアドバイス
診療中のつわり対策として、当院では以下のような工夫をしています。
- 歯磨き粉の香りが苦手な方には、無香料または低刺激タイプをご用意
- 吐き気が強い方には、短時間で効率的にクリーニング
- リラックスできるよう、お好みの音楽をお聞きいただくことも可能
また、ご自宅でのセルフケアについても、妊婦さん一人ひとりに合わせたアドバイスをお伝えしています。
つわりで歯磨きが辛い時期は、以下のような工夫をお試しください。
- 歯ブラシは小さめヘッドを選ぶ:奥まで入れずに済み、嘔吐反射を起こしにくくなります
- 下を向いて磨く:唾液や水が喉に流れにくく、気持ち悪さを軽減できます
- 歯磨き粉は少量または使わなくても:プラークを除去することが最優先です
- 体調の良い時間帯に磨く:朝が辛ければ、昼や夕方でも構いません
- こまめにうがいをする:磨けない時は、水やお茶で口をすすぐだけでも効果的です
つわりで嘔吐してしまった直後は、強い胃酸によって歯の表面が一時的に柔らかくなっています。この状態ですぐにゴシゴシ磨くと歯が削れやすくなってしまう(酸蝕症)ため、まずは水でしっかりうがいをしてお口の中の酸を洗い流し、30分ほど時間を置いてから優しく歯磨きをするのがおすすめです。
一方、嘔吐を伴わない通常の食事や間食の後は、虫歯菌の活動を抑えるために、できるだけ早めに歯磨きをしましょう。とはいえ、つわりの時期は無理をせず「体調が良くてできる時に、できる範囲でケアをする」という柔軟な姿勢で大丈夫ですよ。
妊娠期別の通院タイミングと注意点
妊娠期間は大きく分けて初期・中期・後期の3つに分けられ、それぞれの時期で体調やお口の状態が変化します。適切なタイミングで歯科メンテナンスを受けることで、母子ともに健康を守ることができます。
妊娠初期(1〜15週)の過ごし方
妊娠初期は、つわりが始まり体調が不安定な時期です。また、この時期は胎児の重要な器官が形成される大切な時期でもあります。
歯科治療に関しては、緊急性のない処置は避け、痛みや腫れなど急を要する場合のみ必要最小限の対応を行います。予防メンテナンスについても、無理に通院せず、体調が落ち着いてから受けていただくことをお勧めしています。
ただし、この時期に一度ご来院いただき、お口の状態をチェックしておくことは有意義です。妊娠中期以降の治療計画を立てたり、セルフケアのアドバイスを受けたりすることで、安心して妊娠生活を送れます。
妊娠が分かったら、まずは母子手帳を持参してご相談にお越しください。体調に合わせて短時間での診察も可能です。
妊娠中期(16〜27週)が最適な治療時期
妊娠中期は「安定期」と呼ばれ、つわりも落ち着き、お腹もまだそれほど大きくない、最も体調が安定している時期です。この時期が、歯科メンテナンスや必要な治療を受けるベストタイミングです。
当院では、この時期に以下のような予防処置をお勧めしています。
- 徹底的なクリーニング:歯石除去とプラークコントロール
- 歯周病のチェックと管理:妊娠性歯肉炎の予防・改善
- 必要に応じた虫歯治療:出産後は育児で通院が難しくなるため、今のうちに治療しておくと安心です
- ブラッシング指導:妊娠中から産後まで使えるセルフケアの方法をお伝えします
麻酔が必要な治療も、妊娠中期であれば局所麻酔(歯科で使用する麻酔)は安全に使用できます。使用する麻酔薬の量は非常に少なく、胎盤を通過しにくい種類を使用するため、お腹の赤ちゃんへの影響はほとんどありません。
この時期を逃さず、しっかりとお口のメンテナンスをしておきましょう。
妊娠後期(28週以降)と出産後の継続ケア
妊娠後期になると、お腹が大きくなり、仰向けの姿勢が辛くなってきます。また、頻尿やむくみなど、身体的な負担も増える時期です。
この時期の歯科受診は、短時間で済む簡単なチェックやクリーニングに留めることをお勧めします。本格的な治療が必要な場合は、出産後に行うようスケジュールを調整します。
ただし、痛みや腫れがある場合は我慢せず、必ずご連絡ください。妊娠後期でも、痛みのコントロールや応急処置は可能です。
そして忘れがちなのが、出産後のケアです。出産後は育児に追われ、ご自身のお口のケアが後回しになりがちです。しかし、授乳中も虫歯や歯周病のリスクは続いています。
授乳中の歯科治療や予防処置も、基本的には問題ありません。局所麻酔や一般的な歯科治療は授乳に影響しませんので、安心して受けていただけます。痛み止めや抗生物質が必要な場合も、授乳中でも安全な薬を選択いたします。
「赤ちゃんを預けられないから通えない」という方もご安心ください。当院では、ご家族の方と一緒にご来院いただくことも可能ですし、お子さま連れでの受診も対応しております。事前にお申し出いただければ、スタッフがサポートいたします。
妊娠前から産後まで、切れ目のないお口のケアを続けることが、お母さまご自身の健康だけでなく、赤ちゃんの将来の虫歯予防にもつながります。赤ちゃんの歯は、お母さまのお口の健康から始まるのです。
まとめ|安心して通えるマタニティ歯科
妊娠中は、ホルモン変化やつわりにより、お口の環境が大きく変化する時期です。歯周病は早産のリスクを高めることもあり、この時期の予防ケアは、お母さまと赤ちゃん双方の健康を守るために欠かせません。
あい歯科クリニック高尾では、妊娠中・授乳中の方も安心して予防歯科を受けていただけるよう、体調やお腹の状態に合わせて診療いたします。つわりで辛い時期、お腹が大きくなって仰向けが辛い時期、それぞれに配慮した優しいケアをご提供しています。
「妊娠中だから」と我慢せず、お気軽にご相談ください。ご予約はお電話(042-673-7610)またはWEB予約システムから承っております。母子手帳をお持ちの上、妊娠週数と体調をお知らせいただければ、最適なタイミングでのご予約をご案内いたします。
初めての方も安心してお越しください。私たち歯科衛生士が、妊娠中から産後まで、長くお口の健康をサポートさせていただきます。元気な赤ちゃんとの出会いを、心よりお待ちしております。
参考文献
- [1] 日本歯周病学会「歯周病と全身の健康(PDF)」 https://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_perio_body.pdf(2026年3月閲覧)
- [2] 日本歯科医師会 テーマパーク8020「妊娠時の歯やお口のケア」 https://www.jda.or.jp/park/prevent/ninsinji.html(2026年3月閲覧)
- [3] 日本小児歯科学会 子どもたちの口と歯の質問箱「妊産婦」 https://www.jspd.or.jp/question/baby/(2026年3月閲覧)

