「硬いものを噛むと歯茎が痛くて、好きな食べ物を避けるようになってしまった」——そんなご相談が、高尾山麓の静かな住宅街に暮らす患者さんから数多く寄せられます。長年使ってきた入れ歯が急に合わなくなったとき、どこに相談すればよいか迷う方も少なくありません。しかし、多くのケースで「調整」によって改善できる余地があります。焦って新しい入れ歯をつくり直す前に、まず原因を正確に把握することが大切です。
「入れ歯が痛い・合わない」——高齢者の多い高尾地区でよく寄せられる相談
高齢になると入れ歯のトラブルが増える理由
後期高齢者(75歳以上)の平均残歯数は約16本で、約3割の方が総入れ歯を使っているとe-ヘルスネット(厚生労働省、2023年更新)は報告しています[1]。高尾・南大沢エリアは高齢者世帯の多い住宅地であり、入れ歯のトラブルはけっして珍しい悩みではありません。
加齢とともに起きやすいのが、歯茎(顎堤:がくてい)の変化です。歯を失った後は骨が少しずつ吸収されていくため、製作当初はぴったり合っていた入れ歯でも、時間の経過とともに適合がずれてきます。歯の保存状況と咀嚼機能の回復は、食べることの楽しみなどQOLに関連するばかりでなく、全身の健康と生命予後にも影響する可能性があることが研究で示されてきています。口の具合が悪いまま放置することは、全身的なリスクにも直結します。
放置するとどうなるか——口腔機能低下と全身への影響
合わない入れ歯を使い続けると、噛める食品の種類が限られ、栄養バランスが崩れます。口腔機能の低下が食事や会話に支障をきたし、人との付き合いに影響することで、高齢者では寝たきりや認知症リスクとの関連が研究で示されています。また、義歯が不安定なままだと粘膜への慢性的な刺激が続き、口内炎や傷の原因にもなります。
当院(あい歯科クリニック高尾)でも、「数年前につくった入れ歯が急に痛くなった」「食事中に外れるようになった」という方からのご相談を日常的にお受けしています。まずは現状を正確に診断し、調整・リライン・新製のどれが必要かを一緒に考えることを最優先にしています。
「様子を見れば治る」は危険——早期相談が改善への近道
入れ歯の痛みや違和感が自然に改善するケースは少なく、放置すると悪化することもあります。市販の入れ歯安定剤で応急処置をしている方もいますが、これはあくまで一時的な対応です。安定剤で誤魔化し続けると、顎の骨の吸収が進んでしまい、後から調整の幅が狭くなることもあります。違和感を覚えたら、なるべく早期に歯科医院に相談することが、結果的に負担の少ない対処につながります。
入れ歯の不具合には3種類ある——「ズレる」「痛い」「外れる」はそれぞれ原因が違う
①「ズレる・がたつく」——適合不良が主な原因
「食事中にグラグラする」「話すとカタカタ音がする」といった症状の多くは、義歯と歯茎の間に隙間が生じた適合不良が原因です。顎の骨の吸収が進んで歯茎の形が変わり、義歯床(ぎしょう:入れ歯の土台部分)が粘膜にフィットしなくなった状態です。特に体重が大きく変動したとき、長期入院の後、あるいは歯周病治療で歯を抜いた後などに生じやすい傾向があります。
②「痛い・口内炎ができる」——局所的な圧迫と噛み合わせの問題
「特定の場所だけ当たって痛い」「食後に赤くただれる」といった症状は、入れ歯の内面の一部が粘膜を強く圧迫していることが多いです。噛み合わせの高さ(咬合高径:こうごうこうけい)がズレている場合も、特定の部位に過剰な力がかかり痛みが生じます。また、義歯性口内炎(ぎしせいこうないえん)と呼ばれるカンジダ菌による炎症が原因の場合もあります。
③「外れやすい・吸着しない」——辺縁封鎖の低下
「ちょっとした動作で入れ歯が外れる」「唾液が少なくて張りつかない」という場合は、義歯の縁が歯茎の粘膜にうまく密着できていない辺縁封鎖(へんえんふうさ)不良の可能性が高いです。総入れ歯は大気圧と唾液の膜で吸着する仕組みですが、骨が痩せて歯茎の形が変わると、この封鎖が維持できなくなります。部分入れ歯の場合は、クラスプ(金属の留め具)の変形や残存歯の移動が外れの原因になることがあります。
以下に、3種類の不具合と主な原因・対処の方向性を整理します。
| 症状 | 主な原因 | 対処の方向性 |
|---|---|---|
| ズレる・がたつく | 顎堤吸収による適合不良 | 調整またはリライン |
| 痛い・口内炎 | 粘膜への局所圧迫・噛み合わせのズレ | 内面調整・咬合調整 |
| 外れやすい | 辺縁封鎖不良・クラスプ変形 | リライン・クラスプ調整・新製 |
歯科医院で行う「調整」で改善できるケースと、できないケース
「調整」で解決できる場合——早期であれば多くはここで改善
義歯調整とは、入れ歯の内面を削ったり、噛み合わせを整えたりする処置です。当たって痛い部分が局所的な場合、また噛み合わせのバランスが若干ズレている程度であれば、調整によって当院では、CTスキャンや咬合検査を組み合わせて原因を確認したうえで調整を行います。
保険診療の範囲内で対応できる場合がほとんどであり、初回は複数回の細かな調整が必要になることもあります。「1回で完璧に合わせる」ことよりも、「少しずつ当院と一緒に合わせていく」過程を大切にしています。
「リライン(床裏装)」が必要な場合——骨が痩せた後の適合回復
リライン(reline/床裏装:しょうりそう)とは、義歯床の粘膜面に新しい材料を添加して、歯茎との適合を回復させる処置です。
義歯不適合に対する処置としては新義歯の製作とリラインまたはリベースが考えられますが、特にリラインやリベースによる対応を行った場合には、新義歯製作と比較して患者の来院回数や医療費の軽減を図ることができます[3]と、公益社団法人日本補綴歯科学会の臨床指針(2023年)は示しています。骨の吸収がある程度進んでいても、入れ歯の人工歯の咬耗や義歯床の変形が少ない場合は、リラインで十分な適合回復が期待できます。
リラインには口腔内で直接行う直接法と、義歯を預かって技工室で行う間接法とがあります。直接法は診療の場で行えるため広く用いられており、間接法では直接法に比べ適切な厚みを得ることができるなどの利点があります[3]。当院では患者さんの状態に応じて、適した方法を選択しています。
| 項目 | 調整(内面・咬合) | リライン | 新製(作り直し) |
|---|---|---|---|
| 対象 | 局所的圧迫・軽度のズレ | 全体的な適合不良 | 大幅な骨吸収・破損・老朽化 |
| 費用目安(保険) | 比較的低額 | 中程度 | 高め |
| 期間 | 当日〜数回 | 数日〜1週間程度 | 数週間(型取り〜完成) |
| 義歯の状態 | 床や人工歯が良好 | 床・歯が比較的良好 | 床・歯が劣化している |
「新製(作り直し)」が必要な場合——義歯自体の劣化・骨吸収が著しい場合
以下のような場合は、調整やリラインでは対応が難しく、新しい入れ歯の製作(新製)をご提案することがあります。
- 入れ歯を使い始めてから5〜7年以上経過し、人工歯が大きくすり減っている
- 義歯床(プラスチック部分)が割れたり変形したりしている
- 顎の骨の吸収が著しく進み、入れ歯を支えるだけの土台が残っていない
- リラインを繰り返したが改善が見られない
当院では新製の際も、「抜かない・削らない」を基本方針とし、残っている歯や骨をできる限り活かした設計を行います。国内の信頼できる歯科技工士と密に連携し、精度の高い義歯を提供することを大切にしています。
入れ歯を長持ちさせるための日常ケアと定期メンテナンス
毎日のセルフケア——正しい洗浄と保管が基本
入れ歯は毎食後に外して流水で汚れを落とし、就寝前に義歯専用の洗浄液に浸けて保管するのが基本です。熱湯をかけると変形するため、必ずぬるま湯(40℃以下)を使用してください。歯ブラシでこすり洗いをする際は、義歯専用のブラシを使い、人工歯の溝や金属クラスプの周囲も丁寧に清掃します。
公益社団法人日本歯科医師会は、入れ歯を含めたお口のケアを継続して行うことを推奨しています[4]。入れ歯の清潔を保つことは、義歯性口内炎の予防や口臭対策にも直結します。
やってはいけないセルフケア——市販安定剤の誤った使い方
「外れそうな入れ歯を市販の安定剤で固定している」という方は少なくありません。安定剤は短期的な応急処置としては使えますが、長期的に使い続けると顎の骨の変化を感じ取りにくくなり、適切な調整のタイミングを逃す可能性があります。また、安定剤を厚く塗ることで噛み合わせの高さが変わり、顎関節や残存歯への負担が増すこともあります。
安定剤を頻繁に使う状況になったら、それ自体がリラインや調整が必要なサインです。
定期メンテナンスで問題を早期発見
入れ歯の状態は、口腔内の変化とともに少しずつ変わっていきます。異変を感じてから受診するのではなく、定期的に歯科医院でチェックを受けることが重要です。当院では、入れ歯の適合・咬合・粘膜の状態を定期的に確認し、小さな変化を早期に把握できる体制を整えています。高尾駅南口から徒歩約1分とアクセスしやすい立地で、平日は夜20時まで診療しておりますので、お仕事帰りやご家族の送迎後でもご来院いただけます。
まとめ
- 入れ歯の不具合には「ズレる・痛い・外れる」の3種類があり、それぞれ原因が異なります。 症状に応じて調整・リライン・新製のどれが適切かを診断するためにも、まず歯科医院に相談することが重要です。
- 「調整」は局所的な圧迫や軽度の噛み合わせのズレに有効で、多くの場合は保険診療の範囲で対応できます。 早期に相談すれば、比較的少ない来院回数で改善を目指せます。
- 「リライン(床裏装)」は顎の骨が痩せて義歯全体の適合が低下した場合に有効です。 日本補綴歯科学会の臨床指針でも、新製よりも来院回数・医療費の負担を抑えられる処置として位置づけられています。
- 「新製(作り直し)」が必要なのは、義歯の老朽化・大幅な骨吸収・リラインで改善しない場合です。 当院では国内の歯科技工士と密に連携して高精度な義歯製作を行っています。
- 日常のセルフケアと定期メンテナンスの組み合わせが、入れ歯を長持ちさせる基本です。 市販の安定剤を頻繁に使うようになったら、調整が必要なサインです。
「入れ歯の具合が悪いけど、どこに相談すればよいかわからない」という方も多くいらっしゃいます。高尾駅南口から徒歩約1分のあい歯科クリニック高尾では、入れ歯の調整・相談を随時受け付けています。当院は小林正明院長をはじめ、補綴・歯周病・麻酔の各分野の専門家(新心会グループ所属)が連携し、原因を丁寧に分析したうえで最適な対処法をご案内しています。土曜・日曜も診療しており、WEB予約は24時間受け付けています。まずはお気軽にご連絡ください。
📞 042-673-7610 / WEB予約はこちら
はじめて受診される方は、初めての方へ(初診の流れ)もあわせてご覧ください。
参考文献
[1] e-ヘルスネット(厚生労働省)「歯の喪失と義歯の使用状況」kennet.mhlw.go.jp
[3] 公益社団法人日本補綴歯科学会「リラインとリベースの臨床指針 2023」hotetsu.com
[4] 厚生労働省「地域がいきいき 集まろう!通いの場——お口の健康を保つために」kayoinoba.mhlw.go.jp

